戸建てと違い、マンションは人の出入りが多く、住人以外の人が出入りをしていたとしても気が付きにくいため、部屋数の多いマンションでは特に防犯対策を強化しておくことが重要になってきます。
その防犯対策の一つに『防犯カメラ』という選択肢があるのですが、防犯カメラがマンション自体に設置されていない場合も多く、マンション管理者が必要性を感じていない場合は、個人で設置することを検討しなくてはならない場合もあります。
そんな時に、知っておくと便利な『法的観点からみる防犯カメラの設置』と『目的別おすすめ防犯カメラ』についてご紹介しますので、参考になれば幸いです。
マンション共用の防犯カメラ映像は住人でも確認できない
基本的にマンションに設置してある共用の防犯カメラ映像は、確認したい人以外の住人も映り込んでいるため、個人情報の都合上、自由に閲覧することができません。
防犯カメラの所有者(管理会社・大家さん)であれば、自由に確認することは可能ですが、仮に所有者にお願いをしても見せてもらえる可能性はかなり低いです。
では、他に防犯カメラを確認する方法はあるのでしょうか?
結論から言うと、『警察』もしくは『弁護士』に相談すれば映像を確認することができる可能性があります。
注意点として、あくまでも「犯罪の解決のために映像を確認したい」という場合であれば映像開示に協力してもらえますが、それ以外の法に関わらない案件であると判断された場合は映像開示に警察・弁護士の協力を得られないことがあります。
もし、空き巣や不法侵入などの疑いがあって映像を確認したい時は、まず警察に相談することで映像開示の協力をしてもらうことが可能です。
個人で防犯カメラを設置しても、法律的には問題なし?
防犯目的で自身の家を撮影するためにカメラを設置する際は、撮影範囲に気を付けて設置をする必要があります。
防犯カメラを設置する行為そのものに法的な問題はありませんが、撮影する範囲が無関係の人のプライバシーを侵害している可能性がある場合は法に抵触する可能性もあります。
過去には、『撮影場所・目的・録画記録の管理』の観点からプライバシーの侵害が認められて、防犯カメラの撤去と損害賠償の請求を言い渡された判例もあります。(東京地方裁判所 平成27年11月5日)
では、防犯カメラを設置する際にプライバシーの侵害にならないためには、撮影範囲の設定について具体的に何に気を付ければいいのでしょうか。
また、室内に設置する場合と室外に設置する場合では気を付ける点は変わってくるのでしょうか。
室内に設置する際に気を付けること
防犯カメラを室内に設置する際、プライバシーの侵害にならないように気を付けるべきことは1点のみです。
それは、ベランダや窓側を撮影するときに、他人の部屋が常時映り続けるような撮影範囲に防犯カメラを設置しないことです。
基本的に、防犯目的であれども他人の部屋が常にフルHD等の高画質で撮影範囲に入ってしまう場合は、訴えられるとプライバシーの侵害に抵触する可能性があります。
しかし、映っていたとしても画質を落として自身の部屋の中の状況だけ認識できる状態や、録画時に映像の一部を黒塗り加工するプライバシーマスク処理を行っている場合は、訴えられてもプライバシーの侵害には抵触しにくいです。
室外に設置する際に気を付けること
防犯カメラを室外に設置する際は、室内に設置するときに比べて外部の人間が映り込みやすいということもあり、細心の注意を払って撮影範囲の調整をする必要があります。
また、マンションの規約によっては個人的な意思でカメラを設置すること自体が違反されており、状況によっては訴えられる可能性があるので、防犯カメラを設置して問題ないかを事前にマンション管理者に確認をしておく必要があります。
・隣の号室の出入り口が常に撮影され続けている状態になっていないか
・マンションの住人の共有スペースが映り続けていないか
・ベランダから撮影した時に、他の住人の部屋が撮影範囲に入っていないか
・マンションの規約そのものが防犯カメラの設置を禁止していないか
過去の判例では、マンションの住人が出入りする場所を常に防犯カメラが撮影しているせいで「住人の生活状況をある程度把握できてしまう+その撮影をなくしても代わりの防犯対策がある」という観点から、プライバシーの侵害に抵触しました。
基本的には、自室以外を撮影範囲に入れなければ問題ないですが、個人で防犯カメラを取り入れたい場合はまずマンションの管理人に相談をしたうえで、同じマンションの住人に迷惑をかけない撮影範囲を意識して設置するように気を付けなくてはなりません。
防犯カメラは設置する目的で選ぶ!
ひとえに防犯カメラといっても、ドーム型のカメラ・バレット型のカメラ・PTZ機能付きカメラと様々な種類が存在します。
ドーム型カメラなら死角が少ない、バレット型なら存在感があり防犯の抑止力が高い、というように目的に合わせて防犯カメラを選択することが可能です。
防犯カメラの設置を検討しているようであれば、何を目的に防犯カメラの設置を希望するのか明確にすることで最適な防犯カメラと出会うことができます。
今回に関しては、特に需要が高いドーム型とバレット型の2種類の防犯カメラに焦点を当てているので、この2種類がどんな目的に適しているのか確認し、自宅に導入するべきか検討してみてください。
犯罪抑止が目的なら「バレット型」の防犯カメラ
バレット型の防犯カメラは、従来からある標準的なタイプとして有名です。
よくコンビニや銀行などで導入されていて、比較的人の出入りが多いような施設に人気があります。
バレット型のカメラは比較的存在感が強く、設置しておくだけで犯罪を試みている相手に対して威圧的な印象を与えやすいです。
【バレット型カメラの特徴】
●存在感の強い形をしているため、犯人に対して威圧感を与えられる
●存在感が強いため、一般の人に対して安心感を与えられる
存在感が強すぎるが故に、個人的に扱う場合は室内に設置することをおすすめできない対応のカメラとなっています。
しかしその反面、ベランダや玄関先の室外に設置すれば犯罪抑止に強い効果を発揮するのでおすすめです。
映像の記録が目的なら「ドーム型」の防犯カメラ
ドーム型の防犯カメラは一般的にバレット型のカメラに比べて撮影範囲が広くて、死角が少ないのが特徴です。
また、ドーム型はぱっと見ではどの方向を撮影しているか分かりにくいので、どこが死角になっているのか分かりづらく、犯人が死角に逃げづらいことから犯罪抑止の効果がみられます。
【ドーム型カメラの特徴】
●目立たない形状なのでレストランや商業施設に適している
●一般的に画角が広く広範囲を撮影できる
ドーム型はボックス型のように玄関部分・ベランダ部分のようにピンポイントで撮影をするより、広範囲かつ目立たない特徴を活かし、室内で撮影をする方がおすすめです。
まとめ
今回の要点は次の通りです。
・マンション内に個人で防犯カメラを設置する場合は、事前に管理者に確認することが重要
・防犯カメラを設置する場合は、他社のプライバシーを考慮し、撮影範囲を調整する必要がある
・設置するのにおすすめのカメラは室外であればバレット型、室内であればドーム型
やはり、防犯カメラの設置はマンションの場合、管理会社もしくは大家さんに相談をした上で、付近の住民のプライバシーの侵害にならないように配慮して設置する必要があります。また、管理者が事情に配慮し、管理者が費用を負担し防犯カメラを導入してくれる場合もあるので、まずは相談してみるのも一つの手です。