防犯カメラは駅や繁華街や店舗内・集合住宅のエントランスといった身近な場所に設置されるようになりました。
そして、社員のマネジメントの目的でオフィス内の防犯カメラの設置も増えています。
今回は、社内の防犯カメラ・監視カメラの設置について、法的に問題がないのか?プライバシーの問題はどうなるのか?について解説します。
なぜ会社の中に防犯カメラを設置するのか
昨今では、オフィスの入り口にどんな方が来社したかどうかの確認や、重要書類を管理する部屋への出入りや書類持ち出しの確認などのため、オフィス内に防犯カメラを設置することが増えています。
しかしながらオフィス内に防犯カメラが設置されることで不安を感じる従業員の方がいらっしゃることも想定できます。
では、どのようなことと照らし合わせて防犯カメラの設置を決定すればいいのでしょうか。
侵入窃盗などに対する日常的な防犯対策として
一般事務所においても侵入窃盗が発生する可能性があります。
警視庁によれば令和元年の侵入窃盗発生認知件数は57,808件発生しており、発生場所の割合では一戸建て住宅(43.9%)に次いで一般事務所(13.1%)での侵入窃盗が発生しています。
外部からの侵入窃盗が起こりうる状況で、従業員だけでなく、訪問者や出入り業者へ疑いをかけることは会社としても避けたいことだと思います。
普段の施錠忘れの防止も必要ですが、カメラを設置して有事の際の証拠の記録やカメラの存在をアピールすることで侵入抑止することも大切です。
情報セキュリティ漏洩対策として
企業にとって情報管理が重要とされています。情報管理不足により顧客情報や機密情報が流出すれば、再発防止策の施行のために支出が発生し、利益の損失が生じてしまいます。
近年は、情報量の増加による個人情報の価値が上昇しており、以前と比較して情報が漏洩した場合の経済的損失や個人が被る精神的苦痛レベルが大きいため賠償額が増大しています。
日本ネットワークセキュリティ協会が毎年、新聞などのメディア報道された情報を基に、情報漏洩に関わる被害を報告しています。この報告によれば、2018年の想定被害賠償総額は2,684億5,743万円、事故・事件1件当たりの損害額は6億3,767万円という結果であり、2017年のデータと比較しても賠償総額が1.4倍に増加しています。1人当たりの想定損害賠償額も2017年と比較して6167円増加の2万9768円となっています。
また、漏洩した個人情報の人数は561万人で、これは兵庫県の人口(553万人)に匹敵します。たった1年で兵庫県民全員の情報が流失してしまったことになります。
情報漏洩の原因として最も多かったのが、「紛失や置き忘れ(26.2%)」「誤操作(24.6%)」「マルウェア感染や不正アクセス(20.3%)」の3つで、漏洩理由全体の約7割を占めています。
そのため、重要機密にアクセスできる端末にはアクセスレベルの設定といったソフト面の対策に加え、誰が操作したのか、いつ持ち出したのか、の記録を残すために防犯カメラを設置が必要です。
社員や従業員の管理
昨今では働き方改革やダイバーシティという言葉が広まり様々な企業様が推進しております。その中で労働時間の適正化や生産性向上もよく聞く言葉となっております。
会社として改革と実態に不一致が無いよう心掛けているかと思いますが、しかしながら長らく長時間残業を行うことにより結果を維持してきた従業員等、習慣を変えることは難しいのが現実です。
あの手この手を使って残業を行っている従業員がいらっしゃることも現実としてあります。
その中でタイムカードや入退システム管理と並んで防犯カメラを使用し管理を行う会社も増えてきております。
オフィス内の見える化により無申請やデータとは不一致な残業や出勤を防ぐことにつながります。
社内に防犯カメラを置くことはプライバシーの侵害なのか、違法性は?
結論から言うと、社内の防犯カメラの設置自体に違法性はありません。
もちろん、お手洗いの設置は違法になりますが、社内で行う作業において、業務は上司が管理する責任があるため、その管理目的でのカメラ設置や映像の閲覧はプライバシーを侵害しているとは言いきれないでしょう。
とはいえ、防犯カメラの映像自体は個人情報に当たるため、みだりに第3者へ映像を提供したりすることはできないのでしっかりとした管理をしなくてはなりません。
また、上記にお伝えしたように「監視されている」という心的なストレスによって業務の効率やモチベーションの低下してしまうのも問題ですし、明確な使い方を決めずに利用すると管理目的を逸脱するような運用方法になってしまい、モラルハラスメントに発展してしまう場合があります。
社内に防犯カメラを設置する前に大切な事
設置する前に大切なのは、目的と用途を明確化し周知することです。
目的と用途の明確化とは、具体的に「どんな理由でこの場所にカメラを設置するのか」、「いつ・だれが・どのような時に映像を見るのか」をきちんとガイドラインや運用規定として明文化することです。
カメラを実際に運用する人と、管理責任者を別々で選任するとなお良いでしょう。
企業のルールとして定めて社員に対して事前説明を行うことで、双方にとってより良い職場環境の構築を可能にします。
運用規定はどのように決めるか
周知や利用目的を定める事の重要性はわかりましたが、いざ自社で作成するとなると何を参考にすべきかわからないと思います。特に社内体制や内部不正に関わる内容を社外になかなか相談しにくいでしょう。
各都道府県や各自治体が「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」を定めていますので、そちらを参考にするとよいでしょう。
もちろん防犯カメラの設置に対して顧問弁護士やセキュリティ専門会社に相談して運用規定を作成すると間違いが少ないです。
まとめ
今回のまとめはこちらです。
・オフィスへの侵入窃盗や情報漏洩を防止し、社員や従業員を守るためのマネジメントとして社内のカメラ設置が必要
・社内や職場に防犯カメラを設置することはプライバシー侵害や違法には当たらない
・防犯カメラの映像自体は個人情報に当たるため、みだりに第3者に見せたりしてはいけない
・設置する側も設置目的や運用方法を事前に周知する必要がある
・運用規定の作成は各都道府県や自治体のガイドラインを参考にし、顧問弁護士やセキュリティ専門会社に相談する