近所に防犯カメラが設置してあると、人によっては「気持ち悪い…」「盗撮だ…」と感じてしまう人もいるでしょう。
ましてや、防犯カメラが自分の家の方に常に向けられているなんてことになると安心して毎日を過ごすこともできません。
では、防犯カメラを隣家に向けていることは法に触れるのか、もしくは触れないのか、法に触れていないとして対処する方法があるのか過去の判例もご紹介いたします。
防犯カメラが我が家に向いている!あれって違法じゃないの?
防犯カメラの撮影範囲に関して、「どこまでなら撮影しても良い」、「どの方向は撮影してはいけない」、といった具体的な法律は決められていません。
なぜなら、そもそも防犯カメラの使用目的は「泥棒や不法侵入などの犯罪防止」を1番の目的としており、犯罪が起こりうる可能性のある場所への撮影は全て正当な使用目的としてみなされるからです。
しかし、以上のことを踏まえた上でも、隣家の防犯カメラの撮影範囲が自身の家のプライバシーを著しく侵害していると考える場合は、隣家の家主に直接相談するか、不動産管理会社に相談することを検討してもいいかもしれません。
ちなみに、プライバシーを侵害していると考えられるパターンは以下があります。
● リビング・寝室・浴室などの居住スペースが常に撮影範囲に入っている
● 玄関が撮影範囲で、家に出入りする人の顔が常に写ってしまっている
防犯カメラの映像を見せてもらう方法ってあるの?
隣家の方と険悪な仲でないのであれば、直接相談して映像をみせてもらいましょう。実際に確認したら想像していたような撮影範囲ではなかったことや、ダミーカメラがために画角を気にしていなかったというケースも考えられます。
また弁護士にお願いして相談内容が正当と判断されれば、弁護士が映像内容を確認することは可能な場合があります。
客観的にみてプライバシーを侵害している可能性が低いなど、正当な理由がない場合は弁護士でも確認することはハードルが高いと言っていいでしょう。かえって、その確認行為そのものがトラブルの種になる可能性が高いので、防犯カメラの映像を確認するときは慎重に判断する必要があります。
トラブルにならずに苦情を伝えるには?
防犯カメラによるトラブルは、防犯カメラを設置する側が付近の家へ配慮して設置すれば起きません。
しかしそうはいっても、設置する側の人も付近の家の方達が『どこを映されていると不快に感じるのか』が分からないので、付近の家が納得いく撮影範囲で設置することは話し合いでもしない限り難しいです。
では、隣家の防犯カメラに不快感を覚えたらトラブルにならずに苦情を伝える方法はあるのでしょうか。
結論から言うと、トラブルに絶対にならない方法というのはありません。なぜなら、そもそも苦情を伝える時点で防犯カメラの設置者側は「申し訳ない…」という気持ちにはなりにくく、むしろ『苦情を言われた』ことに対しての苛立ちを感じることが多いからです。
それでも、防犯カメラに対して不快感を覚える場合は、撮影されると嫌な部分を具体的に伝えるなどして設置者に対応してもらうのを待つことをおすすめします。
隣家の防犯カメラの撤去が認められた判例あり!
防犯カメラの撮影に対して具体的な法律はありません。ですが、過去に防犯カメラの撮影範囲がプライバシーの侵害にあたるとみなされ違法とされた判例があります。
【過去の判例】
内容 | 被告(管理者)が管理する区分所有建物(マンションなど)の共有スペースに防犯カメラを4台設置しており、それら4台の防犯カメラが居住者のプラバシーを侵害しているとして原告(居住者)が『カメラの撤去』と『損害賠償』を請求した。 |
判決 | 4台のうち1台の撮影範囲が原告(居住者)の日常生活を常に把握することができるとして、1台の撤去と原告への損害賠償10万円(原告が4人だったため計40万円)が言い渡された。 |
判決の具体的な内容 | プライバシーを侵害しているとみなされた1台について。
→この1台は原告宅の玄関・窓付近を映しているもので、玄関・窓付近の防犯を意図したものとして設置されていた。 裁判所側は『カメラの設置は防犯目的である』としつつも、カメラは常時撮影をしていて、原告らの外出や帰宅等という日常生活を常に把握することが可能で、さらにそのカメラの防犯目的の代替案として二重窓や二重鍵に変更ができることから、その撮影によって発生するプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えているとして撤去を認めた。
プライバシー侵害をみなされなかった他の3台について。 →原告らの居住する玄関付近や廊下など、公道に出るための通行路が撮影される範囲となっていないことから、プライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えていないとして原告の請求は棄却された。 |
ポイント | 防犯カメラの目的が『防犯』と正当な理由で設置されていたとしても、原告側の生活において受任できる限度を超えていると裁判所側に認められれば『撤去や損害賠償の請求』は受理される可能性がある。 |
過去の判例を参照に、自身の状況を考察して「自身の生活において受任できる限度を超えている」と見なされる可能性があると判断できた場合は、隣家の防犯カメラを撤去してもらえる可能性があります。
まとめ
今回の要点は以下の通りです。
・防犯カメラの撮影範囲については法律で具体的に定められていない。
・「自身の生活において受任できる限度を超えている」と客観的に判断される可能性があると判断される場合は、撤去してもらえる可能性がある。
隣家の防犯カメラに気持ち悪いなどの不快感を覚えていたとしても、穏便に対処することは中々難しいです。
そのため、本気で防犯カメラの撤去、もしくは撮影範囲の変更をしてもらいたい場合は慎重に弁護士に依頼する必要があります。
また、過去の判例より自身の敷地内を撮影されていたとしても、著しくプライバシーを侵害していなかったり、防犯カメラに代わる案がなかったりする場合は撤去を依頼することは難しいです。
そのため、過去の判例を参照にまずは自身の状況を確認してどういったアクションを取るか検討してください。